殺人事件などの公訴時効が2010年に廃止されてから15年が経った。廃止が決まった当時、警察庁刑事局長だった金高雅仁・元警察庁長官(71)に当時の経緯やその後の思い、捜査の課題などを聞いた。
時効廃止は、殺人事件の被害者の遺族らによる強い訴えをきっかけに議論が始まった。05年には、殺人などの時効が15年から25年に延長されていた。
金高さんは、時効廃止に向けた法改正の議論をする法制審議会(法相の諮問機関)の刑事法部会の委員として議論に加わった。警察は当初、廃止に積極的でなかったという。多くの事件が発生から長くても3年以内に容疑者が検挙されており、時効を廃止しても効果は限定的という意見のほか、捜査資料の保管などで現場への負担増が懸念されたためだ。
ただ、警察を代表して議論に参加していた金高さんの考えは違った。
警察は何よりも被害者とともに歩むべきだと考え、「その路線を変えないといけない」と思った。
きっかけは、法制審の部会で隣の席になった弁護士の岡村勲さん(今年2月に死去)の訴えだった。時効制度がある理由の一つに、時間が経過することによる被害者や社会の処罰感情の希薄化が挙げられていたことに対し、岡村さんは「被害者感情が緩和されるとはなんたる言い草か。被害者は一生苦しまなければならないのに犯人は15年、25年で放免されるとは」と憤った。
【地図で見る】全国の未解決殺人事件
殺人事件の時効が廃止されてから今年で15年。未解決の殺人事件の真相解明の一助になることを目指し、事件を一覧できるページを作成しました。各事件のリストでは、情報提供ができる電話番号も掲載しています。
殺人で妻を失い、被害者のための活動に取り組む岡村さんの言葉は重かった。
金高さんは廃止への賛成を決…